MFG的SS「虚空の蒼玉」
第74話<ぱうだぁ>
昼食の準備を終えたアルテアは、尚も眠るジェイルの所にも食事を持っていく。 眠ってから一刻、微動だにしない所を見ると、相当な負荷だったのだろう。 「ジェイルさん・・・ 少しは食事をとったほうが、回復が早まりますよ」 テーブルに伏したままのジェイルにそっと話しかける。 小声であったが、ジェイルはゆっくりと身を起こし、伸びをひとつ。 「それも・・・そうだな・・」 そうすると、おもむろに皿に手を伸ばし、ゆっくりと食事を始めた。 その光景を見ながら、アルテアは言葉を紡ぐ。 「あの・・どうしてシェインさんが戻ったときに、魔力が減ってしまったのですか? 普通なら持っている魔力の総量が増えるのですから、もしシェインさんの魔力が空っぽでも、マイナスになることはないと思うのですが・・」 実際に、クロウはリアスのエネルギーを正面から受けて、プラスの負荷を受けている。 だがジェイルの場合は逆。マイナスの負荷を受けたのだ。 「・・総量は、増えない。たとえるなら仕切りのある水槽のようなものか」 ジェイルは説明を続けた。 「もともと、俺とシェインの魔力の総量は同じ・・仕切りを境に二等分されているだけだ。 そして、その2つの水位は均衡に保とうと働く。だから俺が魔力を使いすぎたら、あいつにも影響が及ぶ。 さっきのあれは・・水槽の片方だけを空っぽにして、仕切りを外したというか・・そうしたら、一瞬で俺の魔力の水位は半分になってしまう。普通じゃありえないが、あいつは半分の魔力と一緒に別の空間にいたから、水槽の片方だけを空にすることができたんだ」 「そうなのですか・・・突然に魔力が半分になってしまったら、それは反動も大きいものがありますね」 説明をしている間に、ジェイルは食事を終えていた。 空っぽのコップを眺めて、苦笑する。 「まったく、姉か妹かしらねーが、向こうで何をやらかしたんだか・・」 ご馳走さま、と一言つげて、ジェイルは再び机に伏せた。 |