MFG的SS「虚空の蒼玉」
第42話<フシギダネ石島>

「うーん、どうしてもうまくいかないなぁ・・・」
後ろのほうではいまだに二人が魔術合戦をしているところなのだが、
シェインは数回試しても全く変化が見えない。
詠唱を間違えているわけじゃ無いんだけどなぁ、などと思いながら、再び詠唱に入ろうとする。

そこへ、アルテアが本を閉じてこちらにやってきた。
「シェインさんは、もう少し基本からやったほうがよさそうですね」
「基本?」
「はい。魔術と言うのは、この世界にある
 それぞれの元素に働きかけることによって起こせるものなのです。
 ですから、例えば・・・」
本の1ページを開き、短く詠唱を済ませると、
アルテアはまだやっている二人の方に向けて手を伸ばす。
「“サイレント・フィールド”」
そういうや否や、炎と土の飛ばしあいをしていた二人の間で、打ち合われていたものが一瞬にして消える。
二人とも、いきなり何が起きたのか理解できない様子だった。

「これは、空気中にある元素のようなものに、自分よりも弱い魔術師の魔法を使わせないようにする魔法なのです。
 魔術師達がいろいろな種類の魔法を使えるようにしておくのには、このような元素から絶つタイプの魔法を受けた時、
 何もできない状態にならないようにするためなんですよ。」
正確に言えば、その区域の、特定の元素を操る精霊に働きかけることになるのだが、
まだしっかりと精霊たちが見えない以上は、その辺りを話す必要はないだろう。
「なるほど・・・つまり、アルテアさんより強い魔力を持ってないから、
 僕達の呪文が消えてしまった、と・・・」
「えぇ・・・アンロックで戻しておきますけれど、余り遊ばないようにしてくださいね?」
「ほーい;」
釘を刺された二人は、また術の練習に戻っていった。

「さて・・・話を元に戻しますけど、シェインさん。このカードの絵が見えますか?」
シェインの方に戻ってきたアルテアは、カードのようなものをシェインに見せた。
持っているのは4枚、シェインにはすべて確認できる。
なにやら、一枚一枚異なった形の円と、氷の紋章・・・そして1と言う数字が描かれていた。
「全部見えるけど・・・?これはなんなの?」
「これは、魔術をすぐに発動できるように、カード状にした便利なものです。
 詠唱がいらないという利点があるのですが、作った本人にしか使えないのと、覚えている魔法しか使えないのが難点です。」
「詠唱がいらないのは便利そうだね。」
「それと、これは先ほど言った様に使える魔法しか使えないという欠点があるのですが、
 逆に、見えるものは全て使えるということなんですよ。」
「え?じゃあこれって全部使えるんだ。」
「理論上では、そうなります。」
ですが・・・といいながら、そのカードをすべてしまうと、足元に小さな円を描いた。
「だけど・・・なんなのさ?」
「元素に働きかける、と言う話は先ほどしましたけれど、
 その元素が見えなくては、効果的に呪文を使うことはできないのですよ。」
「どうやったら見えるの?」
「慣れるまでは大変ですけれど、イメージしながら詠唱をしてみると、そのうちわかってきますよ。
 わかりやすくするためにも、しばらくこの円にエネルギーを集めるようにイメージしてみてくださいね。」
それでは頑張ってください、と微笑みながら言うと、ほかの二人の方に向かっていった。

「(よーし、イメージイメージ・・・」
そう頭の中で繰り返しながら、シェインは再び詠唱を始めた。
 
 

 

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