MFG的SS「虚空の蒼玉」
第36話<KAI>

-二つの星 重なりし時 世界より 花は枯れ 人死を恐れ 世界混沌へ 導かれる
異界より 現れし者 多世界つなげ 全ての世界 破滅より救うー
〜ウルグレオル町立図書館蔵書 フレイ・アル著「世界の伝承」より〜

「誰か…こちら クロウ。クロウ・バズ。誰か応答してくれ…答えてくれ…」
寝静まった部屋に 小さな声が響く。
声の発声場所は シェインの荷物の中。
だが 誰も気が付かない。昼間の戦闘で疲れ果て 全員が熟睡状態にあった。
「誰か……ら ク………ズ…れか……て ……答え… ………」
やがて 声は消えてゆく。誰にも気が付かれないまま。
そして 夜は明ける。

朝食の席でふと シェインが口を開く。
「昨夜クロウが居たような居なかったような…」
「シェインもか?」
「それなら 私もだ」
「ひょっとして 全員が?」
「ぁの・・・クロウって 誰なんですか?」
ゼロやクロウ そしてライトとアーチェにクレスが異世界へ飛び立った後に合流した
アルテアには 当然クロウ達の事を知らない。
「貴方と会う前に一緒にいた仲間だ。今は事情で別行動だけど」
「そうですか…一度 会ってみたいですね」
クロウの事は それだけでうやむやになってしまった。
昨日の賞金で しばらくは資金に困ることは無いはず。
朝食の後全員一致で 今日一日の間は自由行動になった。

「…シェインさん かばんの中に 何か増えていますか?」
外に息抜きに行こうと部屋を出ようとしていたシェインにアルテアが声をかける。
「え? 増えてないと思うけど…って あれ?」
シェインがかばんから取り出したもの。
それは クロウが持っている筈の錬金石であった。
違うのはただ一つだけ。「ALISS」ではなく「SILVER」と刻まれていること。
「……。やっぱり 行ってくるね。」
シェインはそれを見つめ そしてポケットに入れて部屋から出て行った。
 
 

 

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