MFG的SS「虚空の蒼玉」
第33話<フシギダネ石島>

ゾンビたちの後をついて歩く6人(+1体)
森の中・・・しかも周囲はゾンビがたくさんという状態で、
ますます不気味さを醸し出している。

「それにしても全く無謀な作戦やったなぁ」
「そうだねぇ・・・内心ひやひやものだったけど;」
皆、説得が成功して一安心といったところである。
しかし、アルテア以外戦闘態勢は崩していない・・・いつ裏切って襲われるかもわからないからである。
「それでも、不必要に人を傷つけたくありませんし・・・それに、その人だって話せばわかるはずですから。」
「そうだとしてもその勇気はたいしたもんだな」

ゾンビを作り出しているような魔術師のことを、通常ネクロマンサーと言う。
古より禁術とされているそれらの術は、ほとんどが失われてしまっており、それらの術を専門で代々学んでいるものは非常に稀である。

そのため、数少ない術を求めても闇に走る・・・そのような術を用いる術者は、それに見合うだけの成就させるべき願いがあるのが普通である。
そこから考えられる大きなパターンは二つ。
己の探究心が闇の心に捕らわれた結果、更に強力な術の完成を求めて手を染める・・・と言うパターン。
もうひとつは、術者の命・・・もしくは所持しているものが組織に狙われているというパターン。
この大陸では錬金術はあまり発展しておらず(他の地方では錬金術師の聖地と呼ばれるようなところもあったりするので、正確にはこの地方)、それによって作られるホムンクルスやゴーレムは使えない。
数多く守護者をつけるにはゾンビなどが一番手っ取り早く、しかもすぐに捨て駒にできるのである。

そして、そこまでのことをしてその術者が一体何をしようとしているのか・・・邪な願いを持つものならば倒すしかないが、
少しでも希望があるならば、なるべく事を穏便に片付けたい。
同じ魔術師でもある、アルテアらしい願いでもあった。

「それでも一応気をつけたほうがいい・・・魔術師の血と言うのはいいエネルギーになるはずだからな」
「ねぇねぇ、私たちの世界には魔術って無かったからそういうのよくわからないんだけど」
「どうせその主とか言う奴のところまでは暇なんだし、ここは俺が説明してやろう」
元来た世界には無かったことだから、この際一応聞いておいたほうがあとあと役に立つだろう、とソウが説明を始めた。

長いので要約すると、
・学べば誰でもある程度は使えるようになるが、魔術の才能がある魔術師は全体の中でも本の一握りである。
 そのため、その血が優秀であればあるほどそれに込められているエネルギーやデータは大きい。
・魔術の中でも戦闘用呪文について言うと、
 敵1体に攻撃を与える(といっても威力の幅は広い)基本魔術が初級
 ある程度の範囲全体に攻撃できる基本魔術を中級
 天性の才が無いと容易に使いこなせない光・闇・古代魔術を上級
 と分けられる
ということである。

「(すると、理論上アルテアの血を吸うと強うなるっちゅうことか・・・
 まぁ、真祖だから普段血を吸う必要もないんやけどな」
だけど一回ちょっと試してみたいかも、と思うベルギスだった。
「それじゃぁ、私たちも習えば少しは使えるようになるかも?」
「そんなに難しくないですよ。ただ、人によって得意なものと不得意なものがあるようですけれど。」
それについてはあとでゆっくりやってあげます、と言われ、少しでも役に立つようになるなら教えて欲しいなとシェインとアルカースは後で教えてもらえるように頼み込んだ。

そんなこんなで、戦闘態勢はとっていても、あいも変わらず緊張感は全くなくなってしまっていた。
 

そして数十分歩いた頃、一行の前に洞窟のようなものの入り口が姿を現した。
 
 

 

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