MFG的SS「虚空の蒼玉」 MB隊編
第67話<ぱうだぁ>

「・・うーん・・頭痛い〜;」
シェインは“よくわからないところ”で目を覚ました。
辺り一帯は水。その柱も、階段も、動かぬ水で構成されている。
たった1ヶ所、石で出来た壁には装飾が施されている。
「・・・・ここ何処?またどっかに飛ばされたの?;」
立ち上がって、辺りを見回す。
水色の神殿の中、美しい水の柱が自分の姿を反射する。
「・・なんにも、ない・・・・」

「・・・あぁ!?誰だお前、無視すんなっ」

「へ?;」
突如、自分と全く同じ声が響いた。
振り向けばそこには同じ顔、同じ声の青年。
水の反映だけではなかったらしい。
「な、なによいきなり・・・というかなんで同じカッコなのよ!?」
「それはこっちの台詞だ!というかその声で女っぽい言葉使うな、気味悪い」
「・・仕方ないじゃない;」
いきなり落ち込むシェイン。
確かに青年の言うことにも一理あるのだが。

「というか本当に誰なのよ;私はシェインというけれど・・」
「シェイン・・だって?そうか」
「・・・答えになってないんですが・・」
青年はものすごく納得した表情で、1枚のタロットカードを取り出す。
それは絵柄の反転した「女教皇」
「つまりお前は、こいつの正位置・・なるほどね」
「いや、だから・・・あのぉ〜;」
「ぁー、忘れてた。俺はジェイル・カーティス。言うなればお前のリバースか。
 それよりお前のいたところ・・やばいことになってるがいいのか?」
「え?」
水柱に風景が写し出される。
そこには、見渡すかぎり凍て付く大地・・凍りつく人々。
「うそ・・・!?いったい何が・・」
絶句するシェインの脳裏に、1人の女性が浮かぶ。
「・・まさか、シリウスさん・・」
一気に決着をつける気なのか。
シェインの中ではレイナよりも、レイナと対峙するクロウをはじめとした“敵対する仲間達”の事が気掛かりだった。
景色は移り行く。
完全に凍りついたSHINE、必死で戦う人々。
そして何故か凍らないゼロと、
「(アルテアさん・・?違う、誰・・?)」
大きな片翼を持つ騎士。

「嫌・・こうして私だけ残るなんて・・
 こうして見ていることしか出来ないなんていや!!
 目の前で凍りつく世界を、黙って見ていろというの!?」
「・・落ち着けって;」
そんなの絶対に嫌一一一!!!
刹那、シェインは蒼い光に包まれて姿を消した。

「あーあ、行っちまった・・。
 そろそろ朝かな、俺も起きないと・・」



無防備に凍て付いたシェインの体が、一瞬のうちに開放される。
不思議な力に満たされ、冷気が近づくことが出来ない。
取り憑かれたようにシェインは蒼玉を天にかざし、何かをぶつぶつと言いはじめた。
黙っていても、勝手に言葉が紡がれていく。
蒼玉は冷たい光を放ち、宙に浮いていた。

アルゴの船よ 進路を空に 竜骨の光 道を示さん
深淵の夜空 宝珠とともに 我ら神殿へ導かん
いま我が名において 蒼玉よ 力を解き放て
我はアルゴの星の民 導くものなり


蒼玉を中心に、白い光が爆発する。
大地は揺れ、空を裂く轟音。
そして、直径1kmほどの範囲の冷気をすべて吹き飛ばした。
それどころか、その範囲には冷気が近づけない。

「・・わ、私・・今何を・・?」
状況がわかっていないシェインは、しかし力を使い切り、再びその地へ倒れた。

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補足説明「アルゴの星の民」
アルゴの船と竜骨の光という言葉より、この蒼玉は竜骨座のα星カノープスの力を持っていることがわかる。


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