「シャドーボールっ!!」
放たれたシャドーボールは変則的なカーブを描きオニゴーリに命中、爆発した。 オニゴーリはそのまま起きあがることが出来ずに力尽きた。 私はオニゴーリの事を気にする間もなくふもとへと進んでいった。
止むことのない大雪・・・。 私のコートに次々と吹雪が襲い掛かってくる。 大雪の予報は明日なのにこんなに早くに降り出すとは私は考えてもいなかった。 「うう・・ふもとのポケモンセンターまで身体はもつのだろうか・・・。」 私は下へ、下へと進もうとした。しかし、体が思うように動かない。 50pは積もっている雪だ。これを何とかしたかった。 今はポケモンに頼るしかなかった。ええと、ウォイル(サマヨール)にバスター(バクフーン)・・それと・・・・・・
あ、バスターがいるじゃないか。
ということで火炎放射で周りの雪を溶かそうとボールからバスターを出しす。 「バスター、周りの雪に火炎放射!!」 しかし、吹雪が止むことなく積もり続ける。さらにその雪でバスターを凍えさせ終いには倒れてしまった。 「うう・・・もうだめだ、炎技をつかえるポケモンがもういない・・・。」 バスターをボールに戻し、再びふもとへと歩きつづけた。 バスターの火炎放射のおかげで少しは歩きやすくなったものの先はまだ遠すぎる。 次第に雪の深さも深くなり、以前のような歩きづらい状態になった。もうだめだ・・・・・・・・・。
・・・・・・・。
・・・声が聞こえる、誰だ?
・・・・・・・・・・・・。
気がついたとき、そこは洞窟の中だった。 コートに包まれている体を何とか起こし外を見た。吹雪はまだ勢いが弱まっていなかった。 「あ、気がつきましたか。」 洞窟の奥の方から1人の女がこちらに向かってくる。そしてポケモンも一緒だ。 「良かった。あなた、1人で雪山の所で倒れていたらしいですよ。」 「おまえが助けたのか?」 「いいえ、エンが助けてくれたのですよ。」 女の隣にいたのはヘルガーだった。首にスカーフが巻かれており、なんとも雄々しい姿だ。 「そうだ、名前を言い忘れていましたね。」 女はセイと名乗った。
「そうですか。ではカナメさんはふもとのポケモンセンターへ行くために・・・。」 「そうだ。で、何故おまえはこんな洞窟に・・・」 「この雪山に遭難していた所をエンに助けてもらったんです。」 「何?するとこのヘルガーはおまえのポケモンではないのか?」 「はい。エンは助けてもらったとき既にスカーフが巻かれていました。そのときスカーフに『エン』と書かれていたので・・。」 「誰かと別れたか、それかご主人を亡くしてこの山に住みつくようになったか・・・か。それと・・・・・・・・・」 セイも同じ旅人だった。ポケモントレーナーとしての腕前を上げるために修行していたらしい。 ポケモンリーグではホウエン地方でベスト8を残した人だ。吹雪が止んだらで勝負でもしてみるか。 エンは一度人間のパートナーになったポケモンだ。とても人懐っこくて、今でも私の傍で静かに眠っている。 雪のほうはまだ止まない。いつまで降れば気が済むんだ?
眠気が襲い掛かってくる・・・こんな所で寝たら死ぬのは確実。だが・・・・・・・・・。
・・・・・・・・。
・・・ハッ、何をやっていたのだ。
気がつけばもう雪は止んでいて朝日が差し込んでいた。知らぬ間に寝てしまっていたのか・・・。 セイは既にいなかった。あいつも旅人の1人だからな。勝負が出来なかったのは残念だが、まあ良いか。
風と共に流されるがまま。それが旅者の宿命。
故郷にある旅人のための石碑。あいつも旅人としての宿命を負っているんだ、と私は思った。
「ガル!ガルルルルル!!!」 静寂が一気に打ち破れる。突然エンの唸り声が聞こえた。 急いで唸り声がする場所へと走り出した。 「どうした、エン!」 エンの所へ駆け寄るとそこにはセイとMのフードを被った3人の男がいた。そして男達の物と思われるヘリが3機構えてあった。 あの男達はマグマ団だということがすぐに分かった。私は一回このマグマ団に勧誘された経験があるが、一体何故ここに・・・。 エンのほうは既に戦闘態勢だ。セイもジュカイン、チャーレムを場に出している。 相手のほうはハガネール、グラエナ、エーフィを場に出していた。 セイの方は明らかに不利だ。1対3の勝負だから指示に回せる速さの方は明らかに男達の方が速い。 更にジュカイン、チャーレムもかなり体力が削られていることが一目で分かった。 エンのほうはまだ余裕はあるがそれでも体力は削られている様に見えた。 「エーフィ!サイコキネシス!!」 エーフィのサイコキネシスがジュカインに命中した。 ジュカインは力を最後まで振り絞り、起き上がろうとしたものの体力はもう残っていなかった。 「戻って!テイル!!」 明らかにセイにはヤバイ状況だ。ここは助けてやらなければどうなるか分からない・・・。 「ゆけ!コーム!!」 私はボールからコーム(ブラッキー)を場に出した。出した瞬間、すぐに威嚇している様子で体にある輪が朝でもはっきりと光っていた。 「続いてフリック!!」 ボールを舞い上げ、出てきたフリック(フライゴン)が翼を広げる。 「お仲間か・・・グラエナ、ブラッキーに毒々の牙!」 相手のグラエナの牙に毒が溜めこまれ、グラエナはそのままコームに飛びかかった。 「コーム、影分身!」 グラエナの牙で噛み付かれそうになるギリギリの所でコームは何重もの分身を作り出した。 「次に妖しい光だ!!」 影分身から妖しい光が出される。光は分身からも放たれて効果は全体化となった。 動きが素早いエーフィは光から回避することは出来たが、 攻撃が終わり隙を見せられたグラエナや、動きが鈍いハガネールは光に当たってしまい混乱状態になった。 「今だ、フリック!エーフィに破壊光線!!」 エーフィが妖しい光を避けて攻撃態勢に入ろうとしたとき、目の前にフリックが立ちはだかる。 そのまま破壊光線が放たれた。エーフィは回避する余裕もなく破壊光線を受け一撃で倒れてしまった。 「ぬ・・戻れ、エーフィ。」 男の1人がエーフィを戻し、そのまま1機のヘリへ乗り移り、戦闘から離脱した。 「ハガネール、ラムの実を食え。」 ハガネールは混乱していて少し時間がかかったが何とか持っていたラムの実を食べ混乱から我に返った。 「ハガネール!フライゴンに噛み砕く!!」 破壊光線を放ち、エーフィを倒した瞬間のことだった。間一髪で攻撃はかすった程度の物だった。 「シエイ!ハガネールに飛び膝蹴りよ!」 その瞬間に今度はチャーレムが飛び膝蹴りを繰り出す。 「ハガネール、チャーレムにアイアンテール!!」 すぐさま鋼鉄の尻尾が襲い掛かった。力の差は圧倒的でチャーレムは地面に思いっきり叩きつけられた。 ボロボロの状態だったチャーレムも倒れてしまう。 「・・シエイ、戻って!」 セイはチャーレムをボールに戻す。雪にはチャーレムの叩きつけられた跡がくっきりと残っていた。 「次は・・ゲイラよ!」 ボールからグライガーが場に出された。 「ゲイラ、地震!!」 地震という言葉が私の耳から聞こえた。地震?冗談じゃない、地震には苦手な私にそれは・・・ そう考えているうちにグライガーは急上昇する。きっと地震の準備だろう。 「とりあえず・・・コーム、タイミングを見計らってジャンプだ!」 グライガーはそのまま急降下し地面に突っ込み、そこから地面の揺れが生じた。 コームはそのまま高く跳び、何とか地震を回避した。 ハガネールは回避できない状態でそのまま地震を受けたが体力はまだまだあるようだ。 混乱からようやく直ったグラエナはコームと同じくジャンプをして地震を上手く回避できた。 しかし突然、グラエナの目の前で同じくジャンプで回避していたポケモンがもう一匹いた。エンである。 エンが火炎放射を放つ。至近距離での攻撃だったのでグラエナは避ける余裕もなかった。 そのままグラエナは地面へドスッと落ちる。所々に焦げ目がついていたが何とか立つことが出来た。 一方私はというと地震によって感覚機能が一時失いかけた。地震にはどうも弱いのだがそうもしてばかりはいられなかった。 今こそ相手に止めを刺す絶好のチャンスだと・・・・。 「・・・コーム・・電光石火だ!」 目にも見えない速さで地面に着地し、そのままグラエナの懐へ体当たりしクリティカルヒットした。 追い討ちをかけられたグラエナはそのまま倒れてしまった。 「チッ。やられちまったか。」 グラエナを持っている男はボールにグラエナを戻し、そのままヘリで撤収した。 「残りはハガネールのみか・・・・。」 地震によりダメージを受けていたものの、まだ戦闘状態に入れている。 巨大な体を持つハガネールをどう崩すかだった。 と考えたとき、突然携帯電話がかかってきた。 「もしもし・・。ああ。撤収?そうか、ここも無反応だったのか。」 最後まで残っていた男がハガネールをボールに戻した。 「やるじゃねぇか、少年少女よ。ここは一旦引き下がるぜ。あばよっ!」 男は捨て台詞を残し、最後の1機のヘリに乗って何処かへと消え去ってしまった。
「うぅっ!気分が悪い・・・はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・・」 さっきの地震による揺れで私はまだ酔っている状態だった。今は仰向けになっていたので何とか酔いが治まってきたようだ。 この前のサントアンヌ号なんかすごい揺れだったからずっと甲板にいたが、やはり揺れには弱かった。 「あの、ありがとうございます。」 「いいんだ。うぅっ・・・。風があるからまだ大丈夫だ・・・」 「すみません、私が地震を使ってしまったからあなたを酔わせてしまって。」 「いや、大丈夫だ。大分楽になったから・・・それよりも、マグマ団は何故ここに来たんだ?」 「この雪山、本当は火山だと聞いたことがあります。」 「何?そうだったのか。」 「多分彼らの目的はこの火山の眠った力を引き起こさせていこうと図っていたのでしょうね。」 酔いも完全に治まってきた頃だったので私はそろそろ体を起こすことが出来るようになった。 「でも何とかこの山のほうは無反応だったらしいですね。相手の携帯でこの山は無反応だと言ってましたから。」 「そうか、それならこの雪山で生息するポケモンも安心して暮らせるな。」 「そうだ、私と一緒に旅を楽しみません?」 「え、私は独り旅の方が似合うと思うのだが・・・・。」 私は一瞬戸惑った。セイは最初、何も言わずに洞窟から出ていったのだが・・・。気分が変わったのだろう。 1人ではなく仲間を持つというのも良いだろうな。私は遂に納得してしまった。 「・・・そうだな。それならエンと共に言ったら旅はもっと楽しくなるかもしれないな。」 「ええ、そうですね。おいで、エン。私達と一緒に旅に行きませんか?」 エンの返事はもちろんOKだった。これで決定だ。 雪山の洞窟による運命の出会い。これからの旅はいっそう楽しみになるだろうな。 そう思いつつ、セイ、エンという仲間と共にふもとのポケモンセンターへと下山していった。
END
-------------------------------------------------------------------------- 後書き はい、小説歴0年と言うとんでもない者です(何
|