MFG的SS「虚空の蒼玉」
第66話<KAI>

「…(もうすぐ約束のときが来るのね」
コローネは夢を見るように 眠りに入っていた。
過去を思い出すように…深く…深く…。

いつものように空間移動を行っていたとき 一人の少女とすれ違った。
「…いつものことよね」
だが この日はそれだけでは済まなかった。
空間転移で 現れた場所。それがすべての始まり。
目の前には暴走するライカンスロープ。
そして その足元に広がるたった今流された明らかに人の血。
そして何か獲物を探す様に…いや 実際に探しているのだろう。
先ほどすれ違った少女は かすかだが血の匂いがしていた。
「なるほどね。貴女が彼女を襲った。そして空間の狭間に逃げ出した
 だから見失って探している。…次は私を狙うのかしら?」
コローネの言葉通り ライカンスロープはコローネに襲い掛かってくる。
「しょうがないわね…“クロウズゲート”」
即座に魔術が展開され ライカンスロープの動きが止まる。
「しばらくそこで待ってなさい。後で開放してあげるから」
そういうと 黄玉を取り出し 空間の狭間に舞い戻る。

そこには傷付いた少女だった物と 魂と体が離れてしまった女性。
そして 魂に傷が付いた男性がいた。
「…酷いものね。でも…そこの魂たちは生きたがっているのね」
傷ついた魂に触れ 二つに分ける。
そのままでは暴走する可能性もあるが…
「…私の力を…体を…」
「魂でも意識が残っているのね?貴女 名前は?」
「私は…ツバキと言います。彼は私の友人です…助けて下さい」
暴走する可能性も関係ない魂を当てることで防げるかもしれない。
「貴女の体と魂を 使うけどいいのかしら?」
「それで…彼が助かるのなら」
その言葉を受け コローネは新たな結界を展開 魂の救出を始める。
ツバキの魂を そのまま蒼玉へ封印を施す。
その時に 倒れた彼の最大の暴走要因になりうるであろう魔力を
強制的に抑える特殊魔術式を忘れない。
分けた魂は 少女だった物を組み替えて新たな体を作り出す。
「…さて 最後に仕上げね」
ツバキの体に かすかに残る少女の魂をつなぐ。
「一度離れた体と魂をつなげることはまだ難しいけど
 新しい体につなげるのは比較的に簡単なのよね…」
魂が体に定着することを確認し 分けた魂を袋に詰め
ツバキの魂を持つほうの魔力から 本を作り出し 一緒に詰め込む。
「この辺でいいわね。ていっ」
袋の口を閉め 狭間からきちんとした世界へと突き落とした…。
「後は…あら?二人とも居なくなっちゃったみたいね」
仕方ないというように 肩をすくめ先ほどのライカンスロープの魔術を解きに
再び まともな世界へと歩みだした。


助けた魂を持つもの達が 再び出会うとき
魂の暴走が起きないことを願いながら コローネは夢を見る。
「…クロウ、ツバキ。貴方達は今…何を考えているのかしら
 輝く星々の加護あらんことを…」
目を閉じるその顔から 何か月明かりに反射して光るものが伝っていた。


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