MFG的SS「虚空の蒼玉」
第57話<KAI>

「…嫌な予感がする。…私も見てくるね」
リアスは 昔のことを思い出していた。
満月の夜。血に濡れた獣人。足元に転がる仲間だったモノ。
あの時は 逃げ出すしかなかった。次に狙われたのは自分だったから。
そして力がなかったから。

静かに目を閉じる。今でも一人で勝てるとは思えない。
「…ううん。信頼する仲間が居る。だから…今度は私が止めるっ!
 レディアム…武装錬金!」
決意し 開いた瞳は真紅に染まっていた。
夜の森を 見えるかのように軽やかに駆けてゆく。
そして 向こうからこちらへ駆けてくる気配を察知する。
アルカースとリアスの影が交差する。
だが 恐怖に犯された精神と唯一の目標しか見えない瞳には
お互いの姿は映らない。無言のまま 反対へ離れていく。
「…何処?ジェイルを…あいつを……殺す!」
少女と野獣の舞踊はまもなく開演する。

 

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