MFG的SS「虚空の蒼玉」
第54話<ぱうだぁ>

おもてに対し裏があるように、裏の裏も存在する。
ただしそれは必ずしも「おもて」とは限らない
〜著者不明 「対極の心理学」〜

 
声を出して仕切るジェイルだが、心のうちで確かに感じる気配があった。
封印に失敗し、今もなお現れるもう一つの姿。
それが彼の体術スキルを助けているにしても、落ち着かない気持ちに毎晩焦りを感じている。
 

そうこうする間にも、多い荷物をあさり続ける仲間達。
いらだちは目に見えない力を興奮させる。
「(・・早くしろ・・飛び掛かりそうだ)」
自分の手に持つ青灰色の宝玉をじっと見つめ、気を落ち着けようとする。
つややかな表面に歪んでうつる、自分の褐色の瞳。
時折横切る、黄金色の瞳。
変わり果ててしまう前に・・・
 

宝玉の色が出そろった。
「蒼の抜けた宝玉・・なるほど、シェインは青色と一緒に何処かにいったんだな」
ムクラは冗談のように言った。
笑い事じゃないよ、と周りが突っ込む。
「(シェインだったか・・お前には、こいつが見えないか・・)」
「・・どうかしましたか?ジェイルさん・・」
ジェイルの変化に最初に気づいたのはアルカースだった。
普段なら「・・・さん」という呼ばれ方をジェイルは嫌って文句をつけるのだが、その覇気もない。
「・・・少し、席を外す」
「ですか;」
ジェイルは宝玉を残し、闇の中に消えていった。

「・・・気のせいかな?気のせい、だよね」
一瞬見た黄金色の光が、アルカースの脳裏に引っ掛かっていた。
 
 

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