MFG的SS「虚空の蒼玉」
第46話<フシギダネ石島>

全員わけのわからない状態に陥っていた中、
一人・・・アルテアは、深く息を吸い込むと、本のページを捲る。
以前・・・少しだけ何かを思い出しかけたあのページ。
あれ以来怖くなっていたから見たくなかったけど、
その辺りを探しあて、必要な情報を得た。その答えは・・・

「そうですね・・・驚くことではないのかもしれません。」
「え、どういうことですか?」
「私・・・いえ、私のお兄様も二つの存在があるのです。
 ただ、意図的に変えられるところが違いますけれど」
「っつーと今ここにいるこいつは・・・」

そう言って、ベルギスはジェイルの方を指差す。
しかし、数秒後その指は指されている当人のチョップによって叩き落された。
そんなやり取りを見つめながら、アルテアは話を続ける。

「はい、やはりシェインさんのもう一つの心なのでしょう。
 そして、知っている方と言うのは、貴方方の他の心なんでしょうね。」
「仮にそうだとしてもよ、お前に似た奴はいなかったぜ?」
「それは・・・そうなのでしょうね。
 そのことは、もう少しあとでお話しましょう。」
そういうと、開いていた本を閉じる。
空を見上げると、もう星々が天を覆っていた。
 

アルテアは、全てを思い出した。
アルタイルやシグナスと“分かれて”ここに来たこと。
そして、前の世界で、アルタイルの中で見た全ての記憶。
今は話す必要は無いと思うし、これからも話さない。
アルタイルと合流しても、兄妹として接することにしよう・・・
それだけが、片割れである自分が出来ることなのだろうから。

この世界だけの存在・・・一人の心の一面であるはずの自分が、このように身体を得ている。
ジェイルがアルテアの半身を見たことがないのは当然の事で、
アルテア自体が心の片割れで、しかも元の心の持ち主は違うところにいるのだ。
これもアルタイルとして世界に具現化した男の、心の強さの現われなのだろう。
そうだとしても、この世界で力を発揮する「心の力」は肉体的な「存在力」に反比例する。
そう、四大天使が、あれほど大きな力を持っていながら、大天使の位であるように。
ならば・・・
アルタイルの身体は、その心の力に比べて弱いのだろう。
それがどの程度かはわからないが・・・今は祈ることしか出来ないのだろう。
シェインと、アルタイルの無事を。
 
 

・・・・・・・・・・・・・
補足

私の考え方は伝えづらいので、ここで説明を。
本来なら、心の一面と言うのは、その仮想的な空間だけで触れ合うことが出来る人格・・・
つまり、表と表が関わりあい、裏と裏が関わりあう。
そして、裏は普通表に出てこない・・・何かの干渉がない限り。

シェインの場合、ゼロたちのいる世界に魂が飛んだことが関係しており、
アルテアの場合、アルタイルの力で別の肉体を与えられて分裂した、と言う感じです。

ついでに、アルタイルが魔力で身体を矯正しているのは身体がめちゃめちゃ弱いからです。
それでも魔力が心の力に起因するために、人並み以上に動ける、と言うだけ。
魔力が尽きるということは死に近づくことなのです、彼の場合。
だから、常に魔力を取っておかないといけない・・・そしてその制限も大きいと。

番外編「片翼の騎士」に若干そこら辺のことが書いてあります。
また、この辺りはMB隊編とリンクさせているので、シェインの別世界の話はそちらに書くことに。
 

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