MFG的SS「虚空の蒼玉」
第28話<フシギダネ石島>

先ほどまで薄暗い森の中を歩いていただけに、少しだけ久しぶりに感じる町並みを抜けて一向は歩いてゆく。
やはり見た目に違わず、活気のある街だった。

豊かな街並みを見渡しながら、噴水のある広い場所に来たところでシェインが切り出した。
「・・・で、結局どうするの?また二手に分かれましょうか?」
「確かに宿を取る組と、闘技場で稼ぐ組とに分かれたほうがいいですね。」
どうやら、たいやきは放置らしい。
「それでは、私は宿のほうに・・・なんだか疲れてしまいまして」
「では私も彼女と一緒に宿を取っておく、他の皆はどうする?」
結局、他の4人は全員闘技場に行くこととなったので、アルテアとムクラが先に宿のほうに行っていることに決まった。
そして、宿の場所がわからなくなる可能性があるので、闘技場チームにはアルテアに召喚獣をつけてもらうことにした。
代表してシェインが持っていた弓に憑けておいたので、呼べば出てくるらしい。
魔術とは、便利なものである。
 

広い街なので、夕飯が作れるように食材を調達しながらでも、割と簡単に宿は見つかった。
しかも前回のように狭い場所ではなく、少し広めの部屋だった。
内装も、ちょっとおしゃれに仕上がっている。
二階の眺めのいい部屋を取り、皆の帰りを待つことにした。
「ムクラさんは、行かなくてよろしいのですか?」
「あぁ、私が行っても仕方が無いしな。それに女性を一人だけ行かせるのも危険だろう。」
「お心遣いありがとうございます・・・では、私は夕ご飯の準備をしてしまいますね」
料理は得意なんですよ、と言わんばかりに部屋にある台所に向かった。
先ほど買ってきた食材の中から、必要なものをてきぱきと取り出す。
ムクラは、「手伝えることがあったら呼んでくれ」といいつつも、やることも無くなったのでベッドで横になることにした。

「皆さんは大丈夫でしょうか・・・」
そんなことを言いながら、アルテアは軽い手つきでにんじんを刻んでいった。
 
 
 

→Next