MFG的SS「虚空の蒼玉」
第27話<ぱうだぁ>

わずかに残ったゾンビ達は、戦意を失ったのか攻撃を止めた。
おとなしく背を向けて、どこかへと帰っていく・・・
「さすがは、闘技場で100万リンクス稼いだだけあるな」
「弱っちい護衛に10万も払ってられないっての!」
大勢の敵を倒したというのに、どこかほのぼのとした雰囲気が彼らの中にあった。
その後、なにが襲ってくることもなく暗い森を進み、
一つの光の爆発とともに広大な景色が広がった。
 

「うわぁ・・・大きな街」
さきほどの港町の比ではなかった。
たくさんの施設が並び、道の露店の数も多い。
闘技場らしき建物も、前の街より大きかった。
「さって、まずは・・」

「闘技場に稼ぎにいきますか」
「宿を取ってすこし休みません?」
「たい焼き屋探さんとあかんなぁ」

3人同時に言った。

「・・いや、最初にやることは他のことらしい」
ムクラが冷静に言った。
眼差しの先には、3人の屈強な“用心棒”。
 

「不法進入したのはてめぇらか・・?」
体と態度が大きい一人が言い放った。
「この森は用心棒がいない限り通行は許可されていない。雇わなかったうえに用心棒を捕えたてめぇらは完全な犯罪者だ。しかも団体のな」
いよいよ押し迫って用心棒が毒を吐く。

だが彼らには全くもって通用しない。
「犯罪でしょうか?私達より弱い用心棒を雇っても無駄ですから」
懐から釘をとりだし、アルカースは言った。
「10万リンクス?ぼったくりじゃない?」
シェインが白弓を取り出した。
「ってか、ぶっちゃけそこらの民間人ちゃうか?たかだか力自慢のさ」
ベルギスも手槍を持っていた。
彼らの発言は完全に挑発としか思えなかった。
「ならば、本当かどうかとくと身で味わいな!」
用心棒は都合よく挑発に乗ってくれた。
残りの二人に指示し、斧を手に斬り掛かってくる。
「・・どうみても公認の用心棒ではなさそうですね」
アルテアは静かに呟いた。
そしてその頃には場は一転していた。

「ごめんなさいねぇ、綺麗に縫い付けてしまって」
わずか2本の弓がピンポイントで、かつ強力に相手を捕えて関所の壁に縫い付けていた。
「10万は嘘ですね。10リンクスでも高いかもしれません」
釘と、それに込められた念が別の一人の動きを封じていた。
「動きからしてそこらの賊だな、あんたら」
ベルギスの槍はまともに相手に突きつけていた。
予想もしなかった強さに、3人の“用心棒”は冷汗ばかりかいている。

「政府だか国だかしらないけど、もっとまじめに強い用心棒をお願いしておいて下さいね。いるだけ邪魔です」
 

そうして関所を難なく(?)通過し、西の街に到着した。

 

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