MFG的SS「虚空の蒼玉」
第26話<フシギダネ石島>

 ソウの斧の斬激が敵の頭を割り、
ムクラとベルギスの槍が心臓を貫く。
アルカースの釘とシェインの矢が外すことなく次々と敵を打ち抜いてゆき、
アルテアのサンダーストームが敵を焼き払っていく。
 

現在のメンバーの戦闘方法を確認しておくと、
近接戦闘:ソウ(斧)・ムクラ(槍)・ベルギス(槍)
遠距離戦闘:シェイン(弓)・アルカース(釘)
魔術攻撃:アルテア
 

薄暗い森の中・・・・
心臓か頭を貫かない限り倒せないゾンビたちが相手となると、
こちらからの視界は奪われる上に、相手は生きた人間を感覚的に捉えられるとあって状況的には不利となる。
しかも、次々と襲ってきて、その攻撃は果てることはない。

普通なら、絶望的な状況。
殺伐とした状況の中で、生きるか死ぬかの熾烈な戦いが繰り広げられる・・・・と言うのが一般的だろう。

しかし、このメンバーには全く問題がなかった。
それぞれ苦難を乗り越えてここまで来た猛者・・・相手の数が多いこと以外、苦もなかった。
 

「それにしても・・・くっ!敵が多いですね・・・」
「確かに、一体残りはどれくらいなんだ?」
「まったく、矢が何本あっても足りないよぉ;」
「矢ならまだ在庫あるから大丈夫やで」

ベルギスが言うと同時に、マントのところからすぐに換えの矢を出し、シェインに渡す。
日用品から、何に使うのか理解不能なものまで色々出てくる・・・言えばなんでも出てきそうなマントだ。
四次元に繋がっているのでは?と言う疑問もあったが、いまだ誰も聞くものはいなかった。

そんなこんなで、皆殺伐とした中ではなく、妙に和んだ中で戦いが行われていた。
更に、特に全員目だった負傷をしているわけでもなく、
攻撃を受けたとしても、アルテアの施している体を包む薄い魔術防御壁のおかげでダメージは少ない。
 

「でも流石に飽きてくるな・・・なんかこうすぱっと倒せる方法はないのか?」
誰ともなく不謹慎なことを言うと、
「そういえば・・・」と突如何か思いついたのか、ぶつぶつ言いながら頭の中で呪文を探すアルテア。
そんなことをやっている間にも敵は襲ってくるので、考え事中のアルテアに近づいてきたゾンビを、アルカースが釘で刺し貫く。
「この系統の敵には光の魔法がよく効く筈ですから・・・皆さん、当たると困りますから私の近くに来て下さい」
ふりかかるゾンビの攻撃を払いつつ、全員がアルテアの周りに集合する。
人ならぬ人らも、それぞれ只ならぬ気配を感じたのか、森を少しの静寂が包む。

そして、その静寂を破るようにゾンビたちが襲い掛かる・・・それよりも早く、持っていた本の1ページを開く
「“ホーリーレイン”!」
悟られないように詠唱を終えていたアルテアの光魔法。
天から無数の光の矢が降り注ぎ、ゾンビたちに直撃・・・そして浄化していった。
その、光の雨が降り止む頃にはゾンビたちももう、数えるほどしか残っていなかった。
 

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