MFG的SS「虚空の蒼玉」
第22話<フシギダネ石島>

 「さてと、それでは私たちも荷物をまとめましょうか・・・」

残存組も、使命のために動かなければならない。
そして、何より今日でここのレンタル時間が切れるのだ。
今はお昼前。夕方までには次の街の宿場に着かなければならないことを考えると、早いところ出て次の街にたどり着いておくのが得策だろう。

「次の街まで・・・・そうだな、大体3時間と言うところだろう」
「ちゅうことは、昼飯とその他必要物資を購入してからでも遅くはないやろなぁ」
「そうだね・・・途中で何かあるかもしれないし」
「賛成〜」

結局、その時賛成意見をすぐにいえなかったという理由でアルカースが留守番役に任命された。
・・・・結構むちゃくちゃな理由だと思うが

「まぁ、留守番も重要な役目なんだけどね・・・」
暇にしているのもなんなので、得物の手入れをしておこうと、まとめて荷物を置いておいた部屋に向かった。

「・・・・なんだ?この不自然な荷物は」
人一人は入れそうな布袋が、中に思いっきり荷物が入っているように膨れている。
しかも、ここ数日一緒に暮らしてきた中ではこんな布袋など誰も持っていなかった。
 

ここはどうするべきか・・・
1/開ける
2/ほっとく
3/他の人の帰りを待つ

「どうしたものかな・・・・」
この不自然な荷物の中に、変なものが入っている可能性は高い。
しかも、明らかに怪しい。
ここは早めに開けて、ものによっては撤去してしまうのがいいだろう。
だが、一人で対処できないものである可能性も十分にある。
・・・結果、アルカースは得物の手入れの事もすっかり忘れて、数十分ほど悩んだ。
そして、出た結論は「他の人の帰りを待つ」だった・・・のだが。

「いやぁ、また財布を忘れて・・・・って、なんやそれは」
財布を忘れたらしく、荷物を取りに慌ててベルギスが戻ってきた。
忘れたのならどうやって買ったのか知らないが、何故か鯛焼きの包みを抱えていた。
アルカースはそれをあえて見なかったことにして、事情を説明した。
「・・・こういうモンは勇気を持って空けるのが漢ってモンやろが。よし、あけてみよ」
「本当に大丈夫かな・・・」

しゅるっ、とふくろを縛っていた縄を解くと、
中には何故か、青白く長い髪の、眼鏡をかけている女性が眠っていた。
おまけに、、A3位のサイズで数百ページはありそうな分厚い本まで一緒に入っている。
「・・・まさか、お前が拉致ったんか?」
「馬鹿なこといわないでくださいよ;」
「まぁ、冗談やけど・・・それにしてもこいつは誰やねん」
ベルギスは頬をつついてみたり、引っ張ってみたりしているが全く反応はない。
挙句の果てに、盗りたての鯛焼きを近づけてみた
「ほれほれ」
既に、完全に遊んでいる。
「そんなので目を覚ますわけが・・・」
ない、と言おうとした時、やけに眠そうに女性は瞼を開いた。
「たいやき・・・ですか?」
「あぁ、食うか?」
「それでは頂きます〜」
しかも、普通にベルギスから鯛焼きを受け取って食している。
とりあえず、人外の生き物ではないことが証明された。

その流れで何故か3人揃って鯛焼きを食べることになってから、
アルカースはずっと抱いていた疑問をぶつけた。
「ところで、あなたのお名前は?」
「あぁ、はい。もっともな質問ですよね。
 私は・・・そうですね、アルテア=フリューゲル・・・琴音翼です」
少女は、何故か自信なさそうに答えた。
 

 

→Next