その存在を知る者は少ない。
澄み渡る蒼色に染められた、空からの使者。
そして開かれる扉。
それを手にした者は、否応なく“別世界”へと召還され、現世に戻る方法は誰も知らない。
一幻想の世界へ召還されし者、己が身を幻想に染め存在す
深い眠りの中だけだった世界が訪れる。
流星雨の夜一一いくつかの蒼玉が星とともに降臨し
人々の手に渡っていった・・・。
ザクッ。
太い木の幹に、3本目の傷が刻まれる。
「今日で・・3日目か・・」
はぁ、とため息をついて少年がナイフをしまう。
少々背の低い、整った顔だちの少年である。
彼の名はシェイン。・・現世で蒼玉を手にした者の1人である。
当然シェインとは仮の名であり、現世では実は女性なのだ。
「学校無いし、楽でいいんだけど・・暇ぃ・・」
ふぁ、とひとつ欠伸をする。
その時、前方の草むらがガサガサと動き出した。
「な・・・?」
このようなことは“ここ”にやってきてから3日間、一度もなかったことである。
「何?何がいるの!?・・じゃなくて何がいるんだ!?」
何故か持っていた弓を構え、慣れない動作で矢を放つ。
誰かの声が、聞こえたような気がした。
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