MFG的SS「虚空の蒼玉」 MB隊編
第9話<フシギダネ石島>

四大魔導師のうち、まずクロウが会わなければならないのは水の魔術に優れるエレクトラ・ウィルである。
クロウの場合、水の魔術だけは多少の心得がある。
だが、それを実戦で使うにはまだまだ力が足りない。
その上、クロウの得物であるアリスフェアは戦闘用に変形させることによって使用者の気力を減らしていく諸刃の剣。出来れば、それに頼らずに戦いたいのだ。

「失礼します」
そういって、ウィルの部屋のドアをあける。
中には本棚はもちろん、流石水の魔導師と言うべきか、実験用の室内プールまであるようだった。
しかし、彼女の部屋に本人はおらず、代わりにガブリエルがいた。
なにやら、調べものをしているようだ。

「ガブリエルさん、ウィル様はどこへ?」
「あぁ、ウィルさんなら今は私の研究室の方に篭っていらっしゃいますから、代わりに私がここをお借りしているんです」
「・・・彼女が研究室に篭っているとなると、滅多な事では出てこないわ」
「そうか・・・どうしたものか」

まさかステラに会えなかった上にこちらも駄目とは予想外だった。
こうなると、やはり他の魔導師たちに何か教えてもらうほかないか・・・
しかし、クロウは水以外の魔術に関しては使えるかどうか・・・その特性がわからなかった。

そこで、他の属性ではどうか、ガブリエルに診断してもらうことにした。
言われるように手を見せたり、目の中を覗き込まれたりしたのだが・・・
水晶玉をじっと見つめたガブリエルが、何やら困惑した表情を浮かべている。
「・・・どうなんだ」
「駄目です、かろうじて少しだけ風は使えそうですけど・・・他のふたつは素質が限りなく0に近いですね。
 ただ・・・」
「ただ・・・なんだ?」
「よくわからないんですが、他の・・・元素や各魔道分類を逸脱しているような、理解不能な強い力が感じられます。」
「・・・なんだそれは」
「私でも分かりません・・・でも何か特別な力があるということは覚えておいて下さい。」

診断を聞き終わると、クロウは心当たりがないかどうか思い出しつつ、部屋の外に出た。
ジリアンは別の用事があるとの事で、フレアと二人で行動することになった。


「風の魔術を・・・ちょっとだけでも使えるようにしてもらうの?」
「そうだな、本題を果たすまではそうして貰おうか。」
魔術を研究する場だからか・・・妙に無機質な塔の中を歩き、
二人は次に訪ねる人物、レダ・ブロンウィンの部屋の前に到着した。




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