MFG的SS「虚空の蒼玉」 MB隊編
第74話<フシギダネ石島>

氷のドームが壊れた・・・その次の瞬間
皆の目に入ってきたのは

「・・・戦闘機?!」
「これぞこの戦いに備えてE.G.Oの総力を結集して用意してしまった
 試作戦闘機NFX−03、そして乗っているのはあの氷上刑事ですよ」

驚いた様子でいるライトに、いつの間にやら降り立ってきたゼロが、自慢げに説明する。
が、よく見ると

「なんか毀れてないか」
「ああ、燃料ぶちまけながらですから当然です」

素で答えるゼロだったが、その瞬間皆の表情が固まる。
だが、そんなことをしている間に戦闘機は接近し
―その時、氷上が乗っていたのはコックピットではなかったことはさておいて―
本拠地を通り過ぎ、しばらくしたところで

ドォォン

爆発。
直後、巨大な揺れが空間を襲う。

「この空間も・・・もうもたないぞ」
「あー、やっぱ派手にやりすぎましたかねー」

もう、誰も突っ込む気力などなかった。
辺りは既に氷ではなく炎が取り囲み・・・

「少年、案外被害が凄いぞ」
「やっぱ空間の方にがたが来てましたねー」

乗っていたはずの氷上が何故かすぐに姿を現したことは、もう放置しよう。

「で、どうするつもりですか」
「この様子では、空間が崩壊した後には次元の裂け目が出来る。
 ならそれをどうにかするまでだが・・・俺にはどうしようも」
「そうか・・・早く、この空間にいる人たちを退避させるんだ。
 あとは、裂け目に乗じて君達が来た世界に戻る。
 蒼玉の引き合う力を利用して・・・だ」


そういうと、ある程度火が迫っていないところに場所を移し、
魔法陣を展開する。

「最後にちょっと美化してから行きますか。“祝福の大地”」

そう言いながら彼が地に手を当てると、
陣を囲むように薔薇が咲いていく。
同時に、陣の中にいたほぼ全員がこけたのは言うまでも無い。

組成はまもなく完了、すぐに転移するための準備に入る。
その中心のは、シャドゥキャリバーを持つアルタイルが位置する。

「アーチェさんたちはあとから来てもらうか・・・」
「そうですねー、この中では
 氷上さんも早く退避してください。」
「健闘を祈るぞ、少年!」

そういうと、まっすぐと空間の出口へと向かう。
しかし、それと入れ替わるようにして出てくる影・・・

「真由美さん?!」
「アシュレイ、リンクス!」
「フレアさん、ジリアンさん、レダさん・・・」
「・・・ステラさん、早く出ないと、ここは危ない。」
「見送りに来たんだがな・・・時間か、そうか」

最後の別れを予感したかのように、こちらに向かってきたということだった。
全員揃ってくるというのもまた・・・奇跡なのか、運命なのか。

だが、転移の時は迫る。
残酷にも・・・人の間を引き裂くように。

「・・・生きていれば、いつかまた会える。」
「それまで、しばしの別れデスよ」
「自分達は決して、この時の事を忘れない」
「だから・・・また会おう。フレアさん、ジリアンさん。」



消え行くような音と共に、陣は上っていく。
7人はそれを見送るように、手を振ったり、見つめたり、涙したり。

そして、空間の上限に達した時、その上空に次元の裂け目が発生する。
それに飲み込まれるように、一向は向かう。

・・・・アルタイルを除いて。
そう、彼は次元空間へ入るか入らないか・・・その位置に、まだ残されていた。

「おい、まさか?!」
「・・・気づかれちゃいましたか
 私の魔力の残りを全て使って、貴方達を元に戻します。
 言ったでしょう、命を張って見守ると。」
「冗談言うな!」
「・・・冗談じゃありませんよ?
 縁が会ったらまた会いましょう。」

次元の中、ぎりぎり・・・陣の下に位置すように、アルタイルは羽を広げる。
片方しかない、傷ついたその羽を。

もう、彼の耳に、仲間の声は届いていない。
彼の頭の中にあるのは、満足感と、少しの悲しみ。

「傷つけることしか出来なかった力。
 それを有意義に使えるなら、もう私に悔いは・・・」
『嘘を言わないでください、マスター
 貴方にはまだやることがある、待っている人がいる。
 だから・・・行って下さい』

次元空間、非常に不安定なその空間の中・・・
アルタイルがいた位置に、シャドゥキャリバーのみが残される。
彼は、同時に陣の上に戻される

「待て、シャドー!」
『貴方が望む限り、私とは・・・また会えます!』

そう声が発せられると同時、剣から放たれた眩しい光が陣の周囲を覆う。
そして、次の瞬間。
辺りは、光に包まれたまま・・・安全に転移する体制に入ったのだ。
だが、その周囲に剣の姿はない。



振り返るように後ろを見やると、またアルタイルは前を向き、言う。

「・・・もうすぐ出る
 君達がいたところへ。待つべきものがいる場所へ」

皆の顔が期待に輝き
そして・・・その空間を抜けていった。



「虚空の蒼玉〜MB隊編〜」fin


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