MFG的SS「虚空の蒼玉」 MB隊編
第71話<フシギダネ石島>

「存在を焼くか・・・それならこの冷気をも吹き飛ばせる、よく考えたものだ」

シャドゥキャリバーを構え、ミリアムへと向ける。
もう余り時間は残っていない。
この空間の耐久時間も、そして彼の命のリミットも。

「【愚者】が向かっている、間に合うと良いのだが」
「言っておきますけどあんまり私はこの魔術慣れてないんですよー
 二人ともちゃっちゃとあれを何とかして下さい」
「・・・やはりこれしかないか
 二人とも、後は任せた・・・私はここで魔力をほとんど使いきろう」

そういうと、後ろで二人が叫ぶのも聞かず、ミリアムに向けて突撃する。
シャドゥキャリバーも、その意思に答えるように形態を変化させ・・・

―magic breaker―

魔術破壊の剣・・・魔術による攻撃を全て分解、吸収する形態。

「そんなもので・・・私がっ!」
「そんなものかどうか、試してみますかね
 超魔法、“柴弁の螺旋風(ヴァイオレット・トルネード)”!」

ギアンサル戦のときに使ったものより更に強力な風が、冷気と衝突する。
だが、これくらいの風の勢いでは、冷気は止まらない・・・
そう、その冷気自体は止まらないとしても

「押さえつけておくだけで、接近は出来るんですよ!」

冷気の波を切り裂き、ついにミリアムの元へと辿りつく。
所々凍りつきながらたどり着いた彼に、驚いた様相のミリアム。
だが、冷気の中を進む・・・その間に既に魔術詠唱は済んでいる。

「奥義“黄昏の流星雨”!」

アーサーと戦った時に使用した奥義、その威力も更に増している。
剣から無数の魔力弾が辺りに降り注ぎ、一帯の冷気を消し去る。
無論、その流星は例外なく、ミリアムにも降り注ぐのだが・・・
それをガードするために体制を整えている、その隙が勝負となる。

辺りの吹き飛んだ冷気・・・今は霧となってよく見えないその中から

「もらったぁっ!」

霧を突き抜け、ライトが滑り込むようにして突撃。
そして、宝玉を奪取。

「なんだと・・・ぐっ!」

すぐさま奪回しようとするミリアムだったが、
それによって体制を崩し、新たな流星雨が直撃してしまう。

ライトはそのまま妖気をフルに使って勢いを別の方向
・・・アルタイルのいる方向へと向け、目の前で止まる。

アルタイルが何を任せたのか、そのことをとっさに理解し、
冷気が吹き飛んだ瞬間にそれを実行した・・・それだけ。
だが、それだけのことも、言葉足らずな青年の、本当の意思を知らなければ出来ないことだった。

「わかってくれて何よりです」
「もう少し詳しく言っておいて欲しかったですけどね」

苦笑して言うライト。
ミリアムは流星雨の直撃を受けて今はしばらく行動不能だろう。

その間に、二人はゼロの元へと向かった。
最後の、決着をつけるために。

「もう左眼が・・・見えなくなったか
 私の魔力もあとわずか。」

歩きながら、自分の魔力の残りが少ないことを悟るアルタイル。

・・・もう時間は残されていない。
残り5分で起きる奇跡とは、一体どのようなものなのだろうか。


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