MFG的SS「虚空の蒼玉」 MB隊編
第64話<フシギダネ石島>

地球軍本部では、シグナスが気配を感じ取ったように立ち上がり・・・辺りを見回す。
そして、ある一点を見据え

「何か来るよね、お姉ちゃん」
「ここからでも見えるのか・・・何と言う奴だお前は
 まぁ、そこらじゅうにトラップが仕掛けられてるからそう簡単には来れんだろうがな」

ステラの言うとおり、近づいてきたと思った3つの影・・・
その方から、なにやら凄まじい爆発音が聞こえてくる。
一体何を仕掛けたのだろうか・・・レダとシグナスは、怖くて聞く気にもならなかったが。



一方、極星帝国本部は一面、氷の海に閉ざされていた。
その中にいる、シリウスを除いて。

「流石だ・・・この、“ビッグバン・コア”
 この力さえあれば、この空間はおろかこの惑星すべてを凍らせることも可能だろうにな!」

彼女が手にしているのは、水晶玉級の大きさを持つ物体。
その中には、一枚のコイン。

既に、シリウスの横にいた人物だったものは、
発動した術式・・・“アイスジェネレート”の冷派をまともに受け、氷塊と化している。
そしてその冷気は、徐々にこの空間を侵食してゆく。

「心が冷えていく・・・まもなく、身体も冷えていくだろうがな。」

侵食されていく空間を見つめ、シリウスの眼は、どこかさびしそうでもあった。


――地球軍本部。
妙な空気が漂う中、レダがそれを破るように訪ねる。

「それにしてもステラさん、本部に特攻してくるって言うことは」
「そうだな、勝負を急ぐ必要があるのか、それとも・・・」
「その嫌な予感が当たっちゃったかも、ね」

辺りが、少しづつ凍りついている。
今は薄いが、その冷気が止まる様相はない。


――E.G.O戦線

「これは・・・間に合わなかった!」

ゼロが予期していた、シリウスの術式が発動した。
あたりに冷気が充満していることが、それを良く物語っている。
既に、信長の遺体は薄い氷で覆われていた。
これでは、空間が完全に凍りつくまで30分もないだろう。

「切り札が動かせるかどうか・・・冷え切ったら動かせなくなっちゃうじゃ無いか!」

舌打ちすると、ゼロはイオンクラフトを利用し、飛行していく。


――本隊戦線

「私のアストラルが・・・もしかして」

フレアの攻撃手段であるアストラル、
そしてリンの攻撃手段である炎が、突如として消えていく。

「クロウ、まずいことになったみたい」
「・・・シリウスか。だが俺は本拠地に向かえない、な。」

辺りが薄い氷に覆われる中、レイナはまだ戦う気であった。
その相手から逃げ切ることは、ほぼ不可能。

「クロウ、私達はもう支えることしか出来ないけど・・・」
「最後まで、貴方と一緒にいるから」

ジリアンとフレア、徐々に凍り付いていく二人の声を背に受け、
クロウとレイナの戦いは、まだ続いていく。


「これはどういうことですのっ」
「・・・村正のおかげで自分は助かっているだけなのか」

ライトは、当たりで凍りつく仲間達を見ながら、そう呟く。
妖気によって覆われているため、氷気の浸食を受けていないのだ。

「ならここは自分に任せてください。
 本拠地を・・・落とします!」

そういいきると、ライトは走り出す。



再び、地球軍本部。
既に凍りに覆われ・・・ステラとレダも、既に危険な状態だ。
空間の壁を伝うようにして侵食されてきたらしく、ここも案外伝わりが早い。

「兄さん、僕はもう耐えられない。
 もう、これ以上みんなが傷つくのは・・・力を、貸して。」

シグナスの目にとどまる涙が地に落ちる。

刹那、巨大な片翼をもつ男が、地球軍本部に降り立った。
その羽が展開されると同時、本拠地に広がっていた氷気が一掃される。
あっけに取られる二人の前で、男は叫ぶ。

「運命のタロットに導かれるものよ、今こそその力を示せ
 私は・・・“世界”を作ってしまったものとして、全てを終わらせる!」

言うと同時、その羽をはためかせ・・・敵本拠地に向けて、全速力で向かった。
そう、何かを呟きながら。

「・・・しかし、30分以上かかる場合は、この空間も、私の命もない。
 奇跡すら凍てつかせる、その力を破るには、奇跡を持つものが必要なのだが」


戦いは、集結へと動いていく。


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