MFG的SS「虚空の蒼玉」 MB隊編
第41話<KAI>

「・・・すっかり遅くなってしまったか」

クロウたちが会場に戻った頃、既にそこでは撤収の準備が始まっていた。
しかし、そこでまだ食べているものがいた。
大盛りカレー(しかも辛口)をレイナに渡された、シグナスだ。

「あのお姉さん張り切り過ぎだって・・・;
 あれ、お兄さん達もカレー食べるの?」
「そのつもりだったんだけどな」
「“ちょっと”余計なことをしていて時間掛かっちゃったんでしょ?
 まだあるみたいだから大丈夫だケド」

微笑を浮かべつつ指差した先には、まだカレー皿が数枚残っていた。
ありがたくそれらを頂くことにすると、
折角なのでシグナスと向かい合うように席を取った。

一方、そのシグナスは必死にカレーと格闘している。
まだあと1/3ほど残っているようだ。

「なぁ、シグナス。
 俺はクロウ・バズと言うんだが、お前の兄・・・アルタイルはどこにいるんだ?」
「そうね・・・確かにあの人の力があれば、少しは戦いも楽になりそうだけど。」
「うーん、残念ながら僕にはわからないんだよ。
 僕も今探しているところだし、何より連絡を取ろうにも僕には大した魔術は使えないから。」

肩を竦める様に言うと、またカレーに向かう。
かなり辛いらしく、必死になって食べているように見える。

「それじゃあ・・・この子をアルタイルさんの代わりに?」
「そうしようにも、こいつの腕を見てないからな。
 お前は何が使えるんだ?」
「僕は銃使いだよ、リボルバー限定だけど。
 今は魔銃っていうのを使っているんだ・・・なんなら少しやってみようか?」

一度見て決めるか、と言うことで、
食べ終わった後に外で実際にやってみることになった。
その、食べ終わるまでにどれだけかかったのかは、定かでない。



E.G.O本部から外に出ると、満天の星空が広がっている。
クロウだけでなく、結局フレアまでも、シグナスの腕を見るために外に出てきた。

「さーて、じゃあ早速」

そういうと、腰に装着されているホルスターから、1つの銃を取り出す。
少し大きめのつくりで、羽をあしらったフレームが取り付けられている。
それを左手に持ち、右手で銃弾入れから一枚のコインを取り出す。

そのコインには、鷲座の紋様が刻まれている。

「ただのリボルバーじゃないみたいね」
「まぁね。この“ラティエル”は魔銃だから。
 お姉ちゃん達には特別だよ・・・あんまり使わないんだ。この“スターブリット”はね」

そのラティエルと呼ばれた銃のスロットが、僅かに電気を発すようにバチバチと音を立てる。
そして、そのスロットが横にスライドすると、そこにはコインを入れるような穴が開いている。

右手に持っているコインを、そこに投入。
そして、スロットを元の位置に戻す。

息を整えると、良し、と呟き、引き金に力を込める。

「いけぇっ、スターブリット“アルタイル”!」

引き金が引かれると同時、銃口から放たれたのはエネルギー弾。
そして、距離を置くにつれその形は・・・
紋様と同じ、大きな鷲を形作る。

その大鷲は大きく羽ばたくと、
彼方遠く・・・崩れたビルに激突し、
“それ”が通ったあとには、既にもう何も残っていなかった。

シグナスはそれを確認すると、得意そうにラティエルからコインを取り出し、二人の方に向き直る。

「ふー、やっぱり何も無いときにはあんまり威力なかったけど、どう?」
「あれは・・・召喚獣なのか?」
「もうちょっと強く魔力を込めればそういう風にも使えるけど、
 元はただのエネルギー弾だよ。僕の魔力を打ち出しているんだ。」

取り出した鷲座のコインを、元の銃弾入れに戻す。
そこには、他に5枚のコインがあった。

「どうするの?クロウ」
「使えないことはないみたいだからな、まぁゼロたちにも話しておくか。
 で、お前は今日はどうするんだ。」
「僕はここに泊めてもらおうかな、場所あいてるといいんだけど・・・」

そういうと、星の出る空を眺める。
月が、ビルからの明かりに張り合うかのように3人を明るく照らしていた。

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