MFG的SS「虚空の蒼玉」
MB隊編
第32話<フシギダネ石島>
ゼロがいまだにまったりしている、その一方。 E.G.O本部から遠く離れたダークロア戦線では、いまだに激しい攻防が続いていた。 拡散する無数の炎によって、4人を相手しているリンもさることながら、 妖気によって、使い手自身を含めあらゆる物を切り裂くといわれている村正。 それを、まさに今使いこなしているであるライト。 その剣に負けることなく、打撃攻撃でのみ攻撃しているギアンサル。 互いに決定打こそ与えられないものの、じわじわと相手のスタミナを削っていく。 「お主もなかなかやるな・・・」 「くっ、そちらこそ!」 巨大な尾の一撃が轟音を立てて叩き込まれるかと思いきや、 次の瞬間には、見切って翼を切りつけるライト。しかし有効打にはならない。 こんな戦いが、果てしなく続くかとも思われた。 「“氷河の閃光”!」 そこへ、突如として氷の矢が降り注いだ。 それらはギアンサルに命中するも、ほとんどダメージにはなっていない。 「何奴?!」 詠唱の聞こえた方向を、ギアンサル。そしてライトが確認すると、 そこには両手を前にかざし、1対の光の翼を持った男がいた。 先ほどから飛行し、ようやく到着したばかりのアルタイルだ。 「石島さん?!」 「・・・?私はアルタイル=フリューゲルと言うんですが・・・ 自己紹介をしている暇はありません、とりあえず早くE.G.O本部に向かって下さい」 「ど、どういうことで?」 「余り詳しくはわからない・・・ しかし、裏表無き【皇帝】の力を持つものよ。 赤のリバースを持つ【愚者】と、同様に裏表の無い【力】・・・そして不完全に感じる【女教皇】。 3つの力を持つ、3人の者が君を待っている、急ぐといい。」 アルタイルに感じ取れる、タロットカードの力。 その3枚がE.G.O本部を中心に集結しようとしている、と言うことらしい。 ライトの持っている【皇帝】のカードを言い当てたということは、 そこにゼロとクロウがいるに違い無い。 もう一人と言うのが、よくわからないが。 「わからないけどわかりました; じゃあ、皆さんここはお願いします!」 「ちょっとー、飛べないくせに・・・私が連れてくから早くつかまんなさい!」 「ありがとうございます〜」 アシュレイの助けを借りて、E.G.O本部の方向に飛行していく二人。 それを見送り、アルタイルは改めて巨大な竜の方を見る。 大きさと言うものはあまり気にならない、その体を完全に使いこなせられる者は少なく、 大体が邪魔になるか、力押しすることしかできないからだ。 「貴方は、どちらでしょうね。」 「何のことかはわからんが、 この生ける難攻不落と呼ばれたこのわしに、キズをつけられるものなど・・・」 ギアンサルがそう言う間に、アルタイルは腰に携えたシャドゥキャリバーを抜く。 ―dragon slayer― 刹那、低く響く声が発せられると同時に、 シャドゥキャリバーの纏っている魔力が変化する。 「ドラゴンスレイヤー・・・だと!?」 「ふふっ・・・この剣は新しい力が篭っているようだね。 竜族に対して、よく効く剣になったようだよ。」 片手で、数回素振り。 前と使い勝手は変わらない。 「では・・・参ろう」 ギアンサルの尾の一撃が、近くを掠める前にそう言い放つと、 アルタイルは、更に高く飛び上がった。 |