MFG的SS「虚空の蒼玉」 MB隊編
第29話<KAI>

「風の精霊よ…私の願いを」
「水の精霊よ…わたしに力を」
「炎の精霊よ…あたしに力を」
「…地の精霊…私の意思の元に」
風で強化された炎が敵を焼き払い 水がその炎から身を護り大地から魔術に必要な魔力を取り出す。
これが4魔導師の力。
クロウとフレアは その力に圧倒されていた。
その戦闘地域に紛れ込んだ 違和感に最初に気がついたのはガブリエルだった。
「この気配は…」
「ガブリエル……様?」
クロウが 戸惑いながら「様」付けして呼びかける。
「あちらのほうから極星帝国でもなくこの世界の者とも違う気配が…」
ガブリエルの指差す先。そこには居ないはずの女性。
「アレは…(粉嬢!?姿が戻っている…?」
クロウの視界に写ったのはシェインの 本来の姿―ぱうだぁ―だった。
「こら!クロウとやら しっかり戦え!」
その声に応じてクロウはぱうだぁへの道を確保することにした。
「風よ纏え…そして…切り裂け!」
縦に剣を振るう。その威力によってぱうだぁとクロウの間に一本の道が出来る。

ぱうだぁの前に道が作られる。
「あれは…クロウさん!」
その先にクロウが居た。自分の手にはクロウの持っていた錬金石がある。
今を逃せば渡す機会は きっと…無い。
「シェイン!これを!」
錬金石を渡そうとした矢先にクロウが何かを投げてくる。
「これは…錬金石?」
その錬金石に書いてある刻印はSILVER
「え?シルバーが二つ…?」
錬金石の刻印が再び光りだす。
「フレアさん!周りの雑魚を!」
「了解よ。鳥たちよ!」
無数に作り出した鳥をぱうだぁの周りに一気に降下 周辺を壊滅させる。
「紅玉よ!我が名の下に汝が力を示せ!レゼクション!」
瞬間 ぱうだぁの体が光りだす。
光が収まったときに居たのは 弓を持ったぱうだぁの実体だった。
「…体が透けなくなった…うわっ!」
実体を持たされた故に 極星帝国兵の剣などが当たるようになってしまった。
「水の精霊よ…我が願いに答えよ!」
「炎よ…私の願いに答えて!」
「「“バニシングアローズ”!」」
ぱうだぁの周りの極星帝国兵をクロウとフレアが一蹴する。
「何故…ここに?」
「分からないです。ところでシルバーの使い方って…」
「思えば弓が装填される。だからがんばれ。」
「が がんばれって;」
話している間も極星帝国は待ってくれない。…はずだった。
だが 極星帝国も4魔導師もガブリエルたちも動きが止まる。
極星帝国兵が2箇所 左右に分かれて道を作っていた。
その一方から 一人だけ違うオーラを放つものが居た。
「…ロュスさん…。」
ぱうだぁだけが駆け寄っていく。それを静止するものは居ない。
「え〜とですね。レイナさんから頼まれて迎えに着たのですが…」
フレア以外のWIZ-DOMのメンバーの思考が停止した。
「クロウの知り合いじゃないの?なんで敵についてるのよ…」
「さぁ…本人に聞くべきでしょう。」
そんな会話の中 もう一方から…クロウたちが来た方向からも 一人歩いてくる。
「…あの人はさっき…戦いから追い出した…」
「……アリスフェア武装錬金 TYEP3!再生剣“クラフトソード”!」
アリスフェアを第2形態から第3形態へ変化させおもむろにアルタイルへ近づいてゆく。
そして…クロウはアルタイルを斬りつけた。
「いきなり この私に何をする!」
「ふむ…叫べるなら体の傷以外は大丈夫だな。」
アルタイルの体にあった傷がいつの間にか癒されていた。

WIZ-DOMと極星帝国、そして珍妙者数名。
戦うにそこそこ適した面子なのだが 戦う気力がすでに消えうせていた。
そして 誰が言うことも無くぱうだぁとロュス、クロウとフレア達は
ゆっくりとE.G.O本部に向けて歩き出していた。

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