MFG的SS「虚空の蒼玉」 MB隊編
第26話<フシギダネ石島>

そのころ、E.G.O本部に向けて援護に来ていたガブリエルは、
途中に張り巡らされていたアンチマジックシェルの解除に時間が掛かっていた。
構造自体はそう難しいものではないはずなのだが・・・
魔力が増幅されて使用されているようにも見える。
しかし、それも時間をかければそう難しいものではない
最後の調整を終えると、見る見るうちに結界は消えていく。

「ふぅ・・・これで少しは安心ですね。あとは中の方達を・・・」
「その心配は無いですよ、ガブリエルさん」
「ミナさん、こちらにいらっしゃったのですか」
「そうなんですけど・・・」

そう切り出すと、ミナは中であったことをガブリエルに伝達する。
少しの間思案したガブリエルは、自分が本部には連絡しておくから舞さんと一緒に他の所へ行っていてください、
と言い残し、元来た道を引きかえしていった。

「(それにしてもあの魔力・・・あのことも報告しておく必要がありそうですね)」



一方、WIZ−DOM本部からアルタイルのいたところに出てきたクロウたちは、そこで早くも戦闘体制に入っていた。
しかし相手はどうと言うこともない、クロウやフレア、そしてDEEPたちの力には及ばないのだ。
問題は、いまだに戦いを続けているアーサーとアルタイル。
そろそろどちらかの体力が尽きてもおかしくはないはずなのだが、
いまだ互角の打ち合いを続けている。

「(しかし妙だ・・・周りの奴ら、私に手を出すつもりはないらしい
  それならここにいる意味は・・・そうか、そういうことか)」
考えを張り巡らせると、アルタイルはアーサーから距離をとり、クロウに叫ぶ。
「そこの君達、見たところWIZ−DOM軍のようだけど・・
 ここは私に任せて、早いところ向かうところに向かうんだ!」
「そうは言っても、ここで俺たちがいないと今の状態では・・・」
「説明している暇はない。いいから早く行くんだ、手遅れになる前に!」

そういうと、呪文を唱え、クロウたちを外に追い出すように結界を張る。
無論、極星帝国軍も一緒に。

「仕方がありません、早くE.G.O本部へ行きましょう」
「・・・死ぬなよ」
再びバイクに乗ってE.G.O本部の方向へと向かう3人を見送るアルタイル。
軍の奴も、こんな数で私の相手を出来るとは思っていないだろう、
ならばここはどう考えても私・・・そしてほかの援軍の足止めでしかない。

「しかし・・・貴方には言われたくなかったですね。
 【愚者】の力を持つ、貴方にはね。」

そう呟くと、剣に力を集める。
流石にこれだけの数を一度に相手するなら、奥義を使うしかないだろう。
今の身体と魔力で耐えられるかは謎だが、やらなかった場合負けは見えている。
それなら、一か八かにかけるしかないだろう。

「悪いですが、ここで決着と行きましょう」
「ならばこちらも・・・」
互いに剣に力を集める・・・危険を察知してか、取り巻きも下がれるところまで下がっている。
そして、一瞬で両者の技は激突する。

「“ソニックブレード”!」
「“黄昏の流星雨”!」

激しい金属音と共に互いの剣がぶつかり、アルタイルの剣が砕ける。
アーサーの勝ちか・・・
そう思われた瞬間、シャドゥソードに集っていたエネルギーが解放され、
無数の光となって結界の中全体に降り注ぐ。
砕けるのは予想外だが、技としては発動したようである。

全てのエネルギーが結界の壁に跳ね返って、再び地面に注ぎ終わった跡には、無数の穴が開いている。
そしてそこに存在したのは、
刀身が砕けたシャドゥソードを持ったアルタイル、ただ一人であった。

「・・・アーサー、敵とはいえ残念な人を失った。
 それにしても、私も魔力を使いすぎたか・・・左眼分の魔力はなくなったな」

片膝をついて結界を解除する。
体力も、それをカバーするための魔力も限界か
・・・それでも自分の役割は果たした。
あとは、ほかの3人に運命を託すだけ・・・



夢・・・か、ここは現実じゃ無い

近くには一人の人間が立っている。
「何を弱気なことを・・・マスター」
「・・・シャドーか、何故ここに」
「その剣に宿っていたのは、私だからですよ。
 そして、これからも・・・マスター、貴方達と共に」
そう言うと、砕けた剣が光り輝く・・・・



そして、そこで現実へと引き戻された。
夢だったのだろうか?
しかし、剣は確かに新しくなっている。
見てみると少し長くなっているようだし、刀身から溢れる魔力もかなり大きくなっている。
そして、刃には何かの文が刻まれているようだ・・・
左眼が見えない今の状態ではうまく見えないのだが。
「シャドゥソード・・・いや、改めシャドゥキャリバー。これからも頼むよ」
そういうと剣を鞘に収め、杖代わりにして立ち上がる。

まだ、あの3人は頑張っている。
それなら、私も行くしかないだろう・・・
そんな思いを込めて、ゆっくりと歩き出していった。


なお、戦闘が続く今の状況下で、
ゼロがまったりとカレー談義をしていたと言うことは彼は知るよしも無かった。


戦闘結果:
アルタイルvsアーサー、アルタイルの勝利。
アーサーの剣、エクスカリブルは大破。本人は死亡(?)


→Next