MFG的SS「虚空の蒼玉」
MB隊編
第2話<フシギダネ石島>
「迎え・・・?見たところ勢力が違うようだが・・・」 「えぇ、E.G.Oに阿羅耶識、WIZ−DOM・・・・そしてダークロア。」 「極星帝国以外ってとこデスかね。」 事情をよく知っている3人は、自己紹介されなくても全員の顔と名前が一致する。 何せ、ほとんどがリアルでのデッキに入っているのだ。 「ねえねえ、そこだけで納得しないでちゃんと説明してよ〜」 一方、残りの二人は、この人たちがなんなのか、全く判るわけがない。 「えぇ、それでは私が説明を・・・」 見かねて巫女さんの一人が説明をしようとした・・・ その時、突如鴉の群れが黒服の少女の下に集まってきた。 「・・・それどころじゃありません。来ました」 「極星帝国・・・・こんな時に。」 「反応はあなた達が来たところの近くね・・・でもあの辺りは・・・」 何か心当たりがあるように、呟いている少女。 しかし、 「話は歩きながらでいいでしょう。敵なんだったらそっちに行って見るのが先決でしょうし」 ゼロが促すと、全員考えていても仕方がない、と言わんばかりに移動を開始した。 しかし、一応いつ他の小隊が襲ってくるかわからないので、全員で集団行動。 極星帝国がその間にどこかを攻撃しているかもわからないので、みな急いでいる。 そしてその時、ゼロが一人の女子高生の近くに自然と歩み寄っていったのはいうまでもない。 「・・・参りましたね。こういうタイミングで・・・」 クロウたちが最初に転移されてきたポイントから、およそ100メートル。 その地点に出来ていた巨大クレーターにはアンデッドの軍団が集まっている。 そして、その軍団の中央に立っているのは青白い長髪の男性で・・・黒のマントを翻し、何故か一輪の薔薇を携えていた。 「しかし・・・魂半分でも死骸の相手をするには十分。 さぁ、このアルタイル=フリューゲルを恐れぬならば、来るがいい!」 薔薇を持っている左手をアンデッドの一体に向け、根拠もなく自信満々に言い切ると、アンデッドたちも一瞬怯みを見せる。 だが、次の瞬間には全員が中央の男に向かって突撃してきた。 同時に、黒マントの男は微笑を浮かべると、空高く跳躍する。 その背には、白い翼。 「その心意気だけは受け取っておく・・・でも後悔しても遅いよ。 来たれ、我が魂の姿を変えし聖なる魔法の剣、シャドゥソード」 薔薇を上空に投げると同時に天に手を掲げると、魔法陣から長剣が現れる。 それを右手に持つと、再び魔法陣に向けて詠唱をはじめる。 剣を呼び出し、新たな詠唱をするその間、18秒。 アンデッドたちは持っているものは剣なので、上空にいる青年には届かない。 蛇足だが、アンデッドたちは心を持たないから後悔することもないことを付記しておく。 「挨拶代わりに・・・“凍河の煌き”」 両手で構えた剣先に氷気が集まり、その台詞と同時に地上に投げ放たれる。 着弾地点から扇状に広がったその氷気は、氷柱となってアンデッド軍団を襲う。 そして、氷柱によって貫かれたアンデッドは瞬間的に氷結され、粉砕されていく。 この攻撃で、23体いた中で14体が消え去った。 そして、その次の瞬間には既に上空6メートルの地点から地上に降り立ち、纏まっていた3体を剣で横凪にする。 剣に集まっていた氷気で、切り裂かれた敵は先ほどと同じように一瞬にして凍結、粉砕。 「・・・遅い、中級呪文と力の弱まった剣戟でこれとは。 やはり心を持たない・・・・美しさに欠ける者どもではこれが限度か」 残りの6体も、何事もなかったかのように突進してくる。 戦うためだけに肉体だけ蘇らされたアンデッドの悲しい定めだ。 それらを一瞥すると、自分との距離を確かめる・・・・あの技を使っても間に合う、と 「仕方がないですね、今楽にしてあげます・・・・“白夜の囁き”」 剣を構えると、勢いをつけて空を十字に裂く。 瞬く間に剣風が敵を引き裂き、跡形もなく消滅するどころか、 それだけで勢いは足らず・・・上空から見ると、クレーターの大穴に小さな円状の抉れが生じていた。 「貴方方にも・・・・せめて冥界では、天空の星々の加護があらんことを」 落ちてきた薔薇を落とさずにキャッチすると、アルタイルは翼をしまった。 どうやら、魔力によって出し入れできるらしい。 が、剣は腰に携えておく・・・・戻さないのではなく、戻せなかった。 「・・・“もう一人の私”は・・・誰かが時空転移した先に飛ばされたのか。 もう一つの魂と、私の半分の魂を残して・・・となると、私もこれ以上は・・・・」 何か――しかも大勢――が近づく音が聞こえたアルタイルは、 今の戦闘で無駄な体力と魔力を使ってしまって、これ以上は戦えないことを悟っていた。 魔力とは精神の力、魂が半分と言うことはそのキャパシティも少なくなる。 更に、先ほどの技は魔力によってブーストをかけているため、消費が激しかった。 「(私としたことが・・・・失敗だったな」 戦えない以上、流石にやられる・・・・そう思っていたアルタイルにとって、聞こえてきたその声は意外なものだった。 |