「おやすみ」
「おやすみなさい」
「zzz…」
「では よい夢を…」
それぞれ 各自部屋に分かれて眠りにつく。
クロウも 寝ようとしてベッドを見る。
「………」
すでに少女が占領していた。
「…リアスに取られたか…って何でここで寝てるのだか」
落ち着きながら見守ろうとした自分に気がつき苦笑する。
昔はこんなではなかった筈なのに と。
そして リアスと出会い 武装錬金を手にしたころを思い出す。
今夜は長くなりそうだった。
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木造の四角い部屋。
扉は一箇所だけ。
窓は・・・無い。
そして 自分の知らない眠っている少女。
気が付くとそこに居た。
記憶を呼び起こしてみる。
MFG。
ハンドルネーム。
チャット。
蒼い謎の玉。
消え行く知り合い。
そして…記憶が途切れていた。
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「クロウ!剣の持ち方が違うって言ってるじゃない」
赤い髪の女剣士“アリス”が 俺の手の剣を握りなおさせる。
その様子をアーチャー“シルバー”と翼人“翡翠”が そっと見守る。
「そのまま一気に振り下ろす!」
その横では 俺の妹を名乗るリアスがレディアムから
死鎌の使い方を 教わっている。
それをやはり 俺たちを見つけた張本人“ディファン”が見守っている。
これがずっと続くと思っていた。
だが 永遠はやはり 存在しなかった…。
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「ここまでなんて…」
「貴方たちは逃げなさいっ」
この世界に来てから1年がたっていた。
武器を俺とリアスに預け その上で二人を逃がそうとしていた。
それほどにまで追い詰められていた。
「その武器を元に錬金石を作れば俺たちは死なない!」
「例え肉体が滅びようともな!」
「だから…行くのよ。そして生き残りなさいっ」
彼らの声が必死だった。だからそれに答えなければならない。
リアスの手を引き 走り続けた。
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「…出来た。後は最後の仕上げ…」
「にーさん…あまり無理しないでよ?」
逃亡してから2ヶ月が過ぎていた。
約束を守るため 錬金術の村へ来てから必死で錬金式を覚えた。
そして今 目の前に複数の錬金石が完成していた。
練成作業中に蒼玉は紅玉へと変質していった。
だが それらはすべて些細なこと。
最後の仕上げ『名彫り』に作業は入っていく…。
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「にーさん。本当に行くの?」
「…行くしかないさ。記憶が確かなら仲間は必ず居る」
アリスたちと別れて1年。この世界に着てから2年がたっていた。
「止めても…無駄…だよね。にーさんのことだから」
「錬金石が導いてくれる。そして蒼き星たちが」
空では無数の星たちが輝き 見守っていた。
「「蒼き星の加護あらん事を 我ら互いに導かれし事を 今ここに願う」」
リアスと声を合わせ 誓いの言霊を読む。
俺が紅玉を リアスが蒼玉を頭上に掲げる。
「紅玉よ…我が名の下に汝が力を解放する!」
「蒼玉よ…私の名に寄りて汝が力を解放する!」
息を呑みこみ 改めて声を重ね合わせる。
「「開け異界への門!“ウィザードドリーム”!」」
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…長い夢を見ていた気がする。
懐かしく そして辛い夢。
遠くで声がする。
「クロウにーさん!」
「クロウさん。行きますよ」
「zzz」
「早く起きてくださいよ」
そして俺はゆっくりと目を開ける。
今は 仲間が居て 妹が居る。守りたい世界がある。
だから まだ死ねない。元の世界へ帰るためにも。
手元の錬金石に宿りし意思の思いをかなえるためにも。
「…あぁ。行こうか」
顔を上げ 歩き出す。光の中の仲間たちのもとへと。
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